5番手以降の先発投手が優勝を左右する
今年こそ悲願の優勝を、と意気込む広島だが、ちょっと雲行きが怪しい。というのも、オープン戦も始まったばかりとはいえ、対外試合で先発陣の不安定な投球が目立つからである。
その前に、まずは打線を見てみれば、昨季は猛打・ヤクルトの陰に隠れているが、チーム打率、総得点ともに巨人、阪神を大きく引き離し、ヤクルトに次ぐリーグ2位を記録。“菊丸コンビ”や田中広輔など、若手の活躍もあるうえに、今季は新人ながら先頭打者起用の構想も持ち上がっているドラ1・野間峻祥も順調に仕上がっている。さらに新井貴浩が復帰したこともあり、エルドレッドのようなムラのある打者が離脱したとしても、その穴を埋める選手層はしっかりと確保できている。
となると、やはり重要となるのは投手陣。中でも、優勝を狙うのならば、先発の軸となる投手だろう。
ここで、昨季のリーグ覇者・巨人と広島の先発勝利数を比較してみよう。巨人は菅野智之の12勝を筆頭に軸となる4人のローテーション投手で38勝。小山雄輝以下、5番手以降の投手5人が17勝を挙げ、計55勝を先発陣がもたらした。一方の広島は、前田健太、大瀬良大地、バリントン、野村祐輔の4人で37勝、5番手以降は福井優也ら5人で14勝の計51勝だった。
こう見てみると、先発の軸であった4人の勝利数は巨人と遜色ない。長いシーズンに決着をつけるのは、ほんのわずかな勝利数の差なのである。その差を生むのが5番手以降の先発投手だ。
もうひとつ極端な例として2013年の広島の数字を見てみよう。この年は前田、野村、バリントン、大竹寛がそろって2桁勝利を挙げ4人で48勝。にもかかわらず、結果的に巨人に17ゲームの大差をつけられ3位に終わった。4人以外の先発勝利がわずかに4勝であったことがひとつの要因だ。いかに、5番手以降の先発投手が重要かということが分かる。
期待される先発陣が対外試合でことごとく失点……
現在、広島の先発陣は、黒田博樹、前田、大瀬良、新外国人・ジョンソンがローテーション当確とされている。もちろん、6人そろうのがベストだが、先発の軸が4人そろうことは、ほとんどのチームが先発投手の駒不足に悩むと考えれば、大きなアドバンテージとなるだろう。
ただ、それだけでは優勝には届かない。最低4人がきっちりとローテーションを守り安定した勝利を挙げ、それに続く5番手以降の投手の成績いかんが、優勝をたぐり寄せるか、手放すかを決するのだ。
しかし、その5番手、6番手に期待される投手たちが対外試合でことごとく失点し、軒並み危うい投球を披露している。先発の軸の一角にも期待される野村は、調子がいいという報道とは裏腹に、22日のロッテとの練習試合で2回2安打3四死球1失点。失点は押し出しによるものであり、コントロールが信条の投手が制球難を露呈した。
福井は21日の巨人とのオープン戦で3回7安打1四球3失点。悪いときの福井のように四球から崩れるパターンではなかったが、3回には3連打と打ち込まれた。昨季は主に中継ぎとして起用された戸田隆矢は、似たタイプの右投手が多い広島先発陣の中、左腕ということで今季は先発候補にも挙げられているが、こちらも21日のオープン戦で2回3安打1失点。
そればかりか、ローテーションの軸の一人に挙げられる大瀬良も微妙だ。22日の練習試合では味方の失策もあったが、走者を背負った場面で痛打され2回5安打4失点。自らセットポジションを課題に挙げた。
もちろん、これはあくまでも練習試合と始まったばかりのオープン戦の結果であり、現状で評価を下すのは時期尚早である。ただ、先発ローテ入りを争うべき投手たちが、アピールするどころかそろって失点しているようでは、不安は拭えない
「打線は水物、野球は投手」とは使い古された言葉だが、長い野球の歴史の中で常套句となるからにはそれを裏付ける事実があったということ。今季の広島が「5番手問題」で優勝を逃すようなら、その常套句の裏付けデータを提供することになる。
文=清家茂樹(せいけ・しげき)